『フルーツ・ゼリー』(詩集)

メルヘンやめました

私の弁当箱を マイメロディのハンカチで 包むのはやめてほしい

少食

(または、おおげさな天気予報) 昼休み 二段重ねの弁当箱を からっぽにする練習をしている いくらなんでも 空から雪だるまが 降ってくることはない (2018年1月)

私のインターネットを見ている地下アイドルの女はいろんな誰かの真似しかできない

私の手のなかにある ちいさなキラキラの粒をこっそり ポケットに入れて持ち帰る者がいる 自分のものにしたつもりに なっているようだがそれはもうただの きたない石ころでしかないことに 一生かかっても気がつくことはないだろう 偽物のブランドバッグとおな…

ねこふんじゃった

「ねこふんじゃった」の歌詞を 全部 知らないのは 誰のせいだろう ねこふんじゃったを ピアノで弾いたら 大人が怒りだす理由も いまだにわからない (2016)

リボンちゃんの呪い

体重があと 二キログラムくらい 軽くなったら 鳩サブレーが たくさん入っている 黄色いおおきな缶を ひとつ買うつもり (2016)

夏休みになくしたもの

飴玉 ふたつ くっつけたみたいな ヘアゴムの片方 いつのまにか 捜索を打ち切っていた (2015)

かわいい毒

メロンソーダ 嘘のように赤い さくらんぼ ガラスの向こうの 模型とおなじで ほんとうは たべものではない

十二歳の夏

ゼリーの詰め合わせ 五つ子がでてくる お昼のドラマ 「満月をさがして」の四巻の 表紙の淡いピンク色 十二歳の夏が まだ すぐそこにある

水色のりぼん

ショートカットと ポニーテールを 一度に両方できない みかんのジュースは夜しか飲んではいけない 新しく買った服を 着せようとしたら ちいさいアザラシが 手が痛いと言って泣いた (2018年)

ねずちゅう2

まるで 鼠が揃えたように 引き出しのなかの スプーンは きちんとならんでいる 明日は ねずちゅう色の ワンピースは暑いと母が言った (2019年5月)

更衣室

更衣室のロッカーと プールバッグのにおいは わたしをいつも不安にさせた 着替えに じかんがかかり だれもいない更衣室に ひとり とりのこされることが ほとんどだった (2018年)

たたかうおんなのこ

テレビの画面の中の 美少女戦士や魔法少女には とても憧れていたのに シンデレラや人魚姫のような 『お姫様』には なりたいと思ったことが 今まで一度もないということに 昨日 初めて気がついた (2018年)

六月

かたつむりを見ないまま 六月がおわってしまった 一昨日は 色画用紙で ていねいにつくられた 老人ホームの壁の 掲示物のような一日だった (2018年)

ガラスの靴はラメ入りだった

ちいさな頃 リカちゃん人形の あたまの地肌の点々が どうしてもきらいで ほとんど遊ばなかった リカちゃんや ジェニーちゃんの 靴を脱がせて シルバニアファミリーの うさぎに履かせようとした

綿雲はフォークでたべます

セーラー服の スカートのポケット プラスチック製の 折りたたみ式のくし どんな模様だったのか どうしてもおもいだせない おきにいりほど すぐにこわれてしまった (2018年7月)

キキララの水のり

ピアノのお教室に 初めて連れて行かれた日は 雨がたくさん降っていて そとは薄暗かった 母に文房具屋で キキララの絵柄のついた 水のりをひとつ買ってもらった 五歳くらいだった (2015年)

ハム太郎くんのいうとおり

小学校低学年の頃 リボンちゃんのぬいぐるみに わけもなく腹を立て 二段ベッドのうえから 投げとばしたことが何度かある こども部屋の壁と ベッドのすきまにおちた リボンちゃんは おおきな目をあけて こちらをみていた (2018年7月)

可愛いあの娘はいつも見学

かぜのため 今日はプール休ませますと 連絡帳にひとこと書いて 印鑑を押してほしかった 私は五メートルと すこししかおよげない (2018年7月)

コットンワンピース

白地に白藍色の水玉が散らばった コットンワンピースを パジャマ代わりに着ている 夜になると 窓ガラスのそとに火星をさがす 十九歳の夏にそのワンピースを着て 海へあそびに行ったことがある と言った母は おかしそうにわらった (2018年7月)

キラキラアプリ

正方形の写真を よこに三列 たてに ずらずらと おわりなく ならべていくことに耐えかね とうとうやめてしまった 雨の日の集団登校のように 一列になって歩いてほしい (2018年7月)

付箋の緑はメロン色

私はすいかもメロンもたべられない (2018年7月)

16時のシャボン玉

台風がやってくると 夕方のテレビが言った たい焼きが おなかのなかを およいでいる (2018年8月)

ごめんね セーラームーンになれなくって

ちいさな頃にテレビでみた セーラームーンの目薬のコマーシャル プールに飛びこんで 目がまっ赤になるシーンの 目の状態と台詞が 記憶とほんのすこし違う (2018年8月)

アスファルトで目玉焼きが焼けるのなら

取りつけてもらったばかりの エアコンは ほんとうに効きがわるい 目がさめたらアザラシの ぬいぐるみがあおむけになって ねむっていることがおおくなった 三年前の夏の記憶のなかに 緑色のフェンスが見える (2018年8月)

可愛いの呪縛

前髪を目と眉毛のあいだで まっすぐに切り揃えないと 気がすまなったのは いったいどうしてだろう 目が異様におおきく写る ちいさなシールの撮影を わざわざお金を払ってまでしたいと おもわなくなったことと 前髪を伸ばせるように なったことは どこか似て…

カルピス牛乳

カルピスの原液を 牛乳で割ってのむとおいしいと言ったら 従姉妹は顔をしかめた 盆踊りのおどりかたを すっかりわすれてしまっている (2018年8月)

夏休み

毎年 夏休みがおわる頃には ラジオ体操カードは ぼろぼろになっていた 妹とおそろいの ちょきんぎょのなわとび (2018年8月)

白い巻貝

ちいさな頃 耳にあてると海の音が聞こえてくる まっ白な巻貝がほしいとおもっていた (2018年9月)

星のお暇

オレンジ色にひかっているように見えた あの星に ピースのように紐をとおして 首からさげておけばよかった (2018年9月)

恋はUFOキャッチャ〜

いらないのまで おちてくる (2014年8月)