鍋の中、ジャムになる

思い出に 砂糖を入れて 煮詰めても ジャムのようには 甘くならない

飛行機とアザラシはすこし似ている

8月17日 母と飛行機に乗って東京に行こうとしていた 私は羽田空港にある しろたんタウンに行きたいと考えていた 私を乗せたエスカレーターは上にあがる これなら買ってあげてもいいわよと言った母は エメラルドのようなバレッタを手に持っていた

メルヘンやめました

私の弁当箱を マイメロディのハンカチで 包むのはやめてほしい

少食

(または、おおげさな天気予報) 昼休み 二段重ねの弁当箱を からっぽにする練習をしている いくらなんでも 空から雪だるまが 降ってくることはない (2018年1月)

老婆とアザラシ

6月23日 母が連れてきた 見知らぬ老婆のおしりに アザラシのぬいぐるみが潰され 大泣きする夢を 三日くらい前に見た アザラシのぬいぐるみは 黒い両目が飛び出ていた その夢を見る何日か前に 最後に泣いたのは いつだっただろうかと考えていた (2018年)

私のインターネットを見ている地下アイドルの女はいろんな誰かの真似しかできない

私の手のなかにある ちいさなキラキラの粒をこっそり ポケットに入れて持ち帰る者がいる 自分のものにしたつもりに なっているようだがそれはもうただの きたない石ころでしかないことに 一生かかっても気がつくことはないだろう 偽物のブランドバッグとおな…

ふりむいて

いっぽずつ まえにすすんで いることを ふりむかないと わすれてしまう / ごがくゆう

プリン・アザラシモード

かなしみの キャラメルのうえ よろこびの 生クリームと さくらんぼあり / ごがくゆう

ねこふんじゃった

「ねこふんじゃった」の歌詞を 全部 知らないのは 誰のせいだろう ねこふんじゃったを ピアノで弾いたら 大人が怒りだす理由も いまだにわからない (2016)

リボンちゃんの呪い

体重があと 二キログラムくらい 軽くなったら 鳩サブレーが たくさん入っている 黄色いおおきな缶を ひとつ買うつもり (2016)

夏休みになくしたもの

飴玉 ふたつ くっつけたみたいな ヘアゴムの片方 いつのまにか 捜索を打ち切っていた (2015)

かわいい毒

メロンソーダ 嘘のように赤い さくらんぼ ガラスの向こうの 模型とおなじで ほんとうは たべものではない

十二歳の夏

ゼリーの詰め合わせ 五つ子がでてくる お昼のドラマ 「満月をさがして」の四巻の 表紙の淡いピンク色 十二歳の夏が まだ すぐそこにある

水色のりぼん

ショートカットと ポニーテールを 一度に両方できない みかんのジュースは夜しか飲んではいけない 新しく買った服を 着せようとしたら ちいさいアザラシが 手が痛いと言って泣いた (2018年)

ねずちゅう2

まるで 鼠が揃えたように 引き出しのなかの スプーンは きちんとならんでいる 明日は ねずちゅう色の ワンピースは暑いと母が言った (2019年5月)

更衣室

更衣室のロッカーと プールバッグのにおいは わたしをいつも不安にさせた 着替えに じかんがかかり だれもいない更衣室に ひとり とりのこされることが ほとんどだった (2018年)

たたかうおんなのこ

テレビの画面の中の 美少女戦士や魔法少女には とても憧れていたのに シンデレラや人魚姫のような 『お姫様』には なりたいと思ったことが 今まで一度もないということに 昨日 初めて気がついた (2018年)

青いビー玉

6月24日 亡くなったはずのお習字の先生は まだお習字教室をしていた 教室のとびらを開けて 廊下に出てきたお習字の先生は 両手からこぼれそうなほど たくさんのビー玉を持っていた お友達にあげなさいと言って 私の手のひらにビー玉をおとした 私は夢の中で…

六月

かたつむりを見ないまま 六月がおわってしまった 一昨日は 色画用紙で ていねいにつくられた 老人ホームの壁の 掲示物のような一日だった (2018年)

紺色のカーテン

7月2日 母が私の部屋のカーテンを見て 紺色のカーテンは気持ちが 暗くなるからよくないと言った 手足が短くて 毛の長い太った猫が 棚の上からひょいと とびおりた (2018年)

無断欠席

7月5日 体育の鉄棒の授業がいやで 二日続けて学校を休む 昨日は電話をかけた記憶がないので たぶん無断欠席扱いになっている iPhoneの画面にちいさく表示された 時間を見ると午前九時ぴったり 今日もまだ電話をかけていない 中学校のグラウンドで 鉄棒をする…

ガラスの靴はラメ入りだった

ちいさな頃 リカちゃん人形の あたまの地肌の点々が どうしてもきらいで ほとんど遊ばなかった リカちゃんや ジェニーちゃんの 靴を脱がせて シルバニアファミリーの うさぎに履かせようとした

綿雲はフォークでたべます

セーラー服の スカートのポケット プラスチック製の 折りたたみ式のくし どんな模様だったのか どうしてもおもいだせない おきにいりほど すぐにこわれてしまった (2018年7月)

キキララの水のり

ピアノのお教室に 初めて連れて行かれた日は 雨がたくさん降っていて そとは薄暗かった 母に文房具屋で キキララの絵柄のついた 水のりをひとつ買ってもらった 五歳くらいだった (2015年)

ハム太郎くんのいうとおり

小学校低学年の頃 リボンちゃんのぬいぐるみに わけもなく腹を立て 二段ベッドのうえから 投げとばしたことが何度かある こども部屋の壁と ベッドのすきまにおちた リボンちゃんは おおきな目をあけて こちらをみていた (2018年7月)

可愛いあの娘はいつも見学

かぜのため 今日はプール休ませますと 連絡帳にひとこと書いて 印鑑を押してほしかった 私は五メートルと すこししかおよげない (2018年7月)

コットンワンピース

白地に白藍色の水玉が散らばった コットンワンピースを パジャマ代わりに着ている 夜になると 窓ガラスのそとに火星をさがす 十九歳の夏にそのワンピースを着て 海へあそびに行ったことがある と言った母は おかしそうにわらった (2018年7月)

キラキラアプリ

正方形の写真を よこに三列 たてに ずらずらと おわりなく ならべていくことに耐えかね とうとうやめてしまった 雨の日の集団登校のように 一列になって歩いてほしい (2018年7月)

付箋の緑はメロン色

私はすいかもメロンもたべられない (2018年7月)

16時のシャボン玉

台風がやってくると 夕方のテレビが言った たい焼きが おなかのなかを およいでいる (2018年8月)